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金利上昇時代、住宅ローン「変動から固定金利」借り換えは有効か 覚えておきたい「分岐点」とは

出典:Yahoo!JAPANニュース

日本銀行は2026年初頭に利上げを再開し、26年中に政策金利は1%台に乗せるとの見方も出始めた。日銀の利上げ見通しを受けて、住宅ローンを抱える人の返済負担が増加するのは必至で、負担を軽減するために住宅ローンの借り換えを検討する人も増えている。

【シミュレーション】変動金利が上がったら返済額は? 返済額を計算した  

多くの専門家は、借り換えを決断するなら早いほうがいいと指摘する。タイミングを探れば探るほど、メリットが薄れる可能性があるからだ。借り換えはローン残高と残年数が多いほど借り換えメリット額が大きくなる。

年を取るほど、健康リスクが高まる点にも注意が必要だ。健康を害して審査に落ちると、そもそも住宅ローンの借り換えができなくなってしまう。

■金利と団信

住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する塩澤崇氏が言う。

「借り換え時のポイントは、金利と団信。金利に含まれている無料の団信が、どれぐらい充実しているかは必ず確認しましょう。ミドル世代にはもはや『がん団信』は必須でしょうが、がんと診断された場合に住宅ローン残高の50%まで支払われる“がん50”や100%支払われる“がん100”など商品によって差があります。こうしたがん団信の適用対象は『50歳未満』としている銀行がほとんどであることからも、借り換えは早く検討するべきでしょう」

5年前に4700万円の変動金利の住宅ローンを組んだ50歳の男性は次のように嘆息する。

「昨年8月に日銀が利上げを行ったあとに、借り換えを検討したのです。現在のローンにはがん団信がついていないので、金利は下がらなくてもいいから、がん団信がついたものに乗り換えられないかなと借り換え先を探しました。でも、のんびりと必要な書類を集めたりしている間に、50歳の誕生日を迎えてしまって、金利を上乗せしてがん団信をつけるプランしか選択できなくなってしまい……借り換えを見送らざるをえなかった」

 今後、いっそう金利が上昇していくことを考えると、「変動から固定金利へ」の借り換え需要も高まりそうだが、前出の塩澤氏は「時期尚早」と話す。

「現状、変動と固定の金利差は1%以上あり、同じ3000万円のローンを組んだ場合の月々の支払額の差は2万円を超えています。この差が縮まるにはあと5回以上の日銀の利上げが必要となりますし、その状態が35年続いて初めて、固定金利のほうが有利と言えます。過去には小泉政権時代の2006年頃に景気が好調で利上げが実施され、その結果、固定に乗り換える人が増えましたが、ご存じのとおり、2008年にリーマンショックが訪れてゼロ金利時代に突入。変動金利がまた下がっていったため、割高な固定金利にする必要がなかったのです。今後、長期的 に変動・固定金利差が0.7%程度に縮小しない限りは、固定に乗り換えるメリットはないでしょう」

■今後もさほど縮まらない

市場関係者は先日の参院選の結果にも言及する。

「衆院、参院ともに自公は少数与党に転落したため、野党の顔色をうかがいながらの国会運営が続く。野党が求めてきた消費税減税などの財政出動が拡大していくようなら、財政収支の悪化から日本国債の売り物が増える可能性があります。実際、長期金利は参院選後に1.6%台に載せてきており、さらに上昇するリスクがある。そのため、住宅ローンの変動金利と固定金利の差は今後もさほど縮まらない可能性があります」

では、金利上昇局面の防衛策として、早期完済は有効だろうか? 金利負担が増大する前に身軽になってしまおうと考える人が増えてもおかしくなさそうだが、塩澤氏は「繰り上げ返済は避けるべき」と一蹴する。

「政策金利が1.5%まで引き上げられて、変動金利が2%を超えてきたとしても、株などで長期分散投資をすれば、その金利負担を上回るリターンが安定して期待できます。日本株でもならせば年平均上昇率は3%以上ですから。政策的にも住宅ローンには減税措置があり、とても優遇されているので “借り得”なのです。加えて、団信という優れた保険まで付いている。残り元本3000万円なら、タダ同然の金利負担で3000万円の死亡保険に加入しているようなものです。これを前倒しして返済し、保障をあえて手放す理由は見当たりません」

米国の代表的な株価指数であるS&P500の直近10年の年平均リターンは14%以上。日銀の利上げが進めば、円高に振れて円換算のリターンは減少する可能性があるが、それでも金利上昇分を上回るリターンは十分に狙える可能性はある。そのため、繰り上げ返済に充当できる資金があるなら、投資で運用するほうがお得というのが塩澤氏の見方だ。

■65歳までに完済できるように

ただし、近い将来に収入減が予想される人は、繰り上げ返済も一つの選択肢となり得る。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「完済年齢には気をつけるべき」と話す。

「60歳で定年を迎え、定年延長で65歳まで働くという人が一般的であるように、普通の人は60歳で収入が減り始め、65歳で年金暮らしとなるもの。給与収入が途絶えたあとも住宅ローンを払い続けることになると、健康リスクが高まるなどした際に大きな不安を抱えることになる。その点で、65歳までに完済できるよう、計画的に繰り上げ返済を進めるほうが老後破産のリスクを抑えられると考えます」

 なかには退職金で完済することを考えている人もいるだろうが、深野氏は「退職金頼みは失敗のもと」と話す。

「その後、20年、30年と続く老後の蓄えがあるようならば、退職金を活用しての完済もありですが、余裕資金がない状況で退職金を繰り上げ返済に充ててしまうと、これもまた老後破産のリスクを高める可能性がある。だから、今から資産形成を進めながら、計画的に繰り上げ返済を進めることが重要なのです」

ミドル世代は繰り上げ返済も考えながら、まずは借り換えを検討したい。

(ジャーナリスト・田茂井治)