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「利上げ」で”私たちのお金”はどうなる? 住宅ローン、株価、預金、個人向け国債……

出典:価格.comマガジン

皆さん、こんにちは。金融文筆家の田代です。

2025年1月24日、日本銀行(日銀)が金融政策決定会合(日銀会合)にて、「0.5%」までの金利引き上げ(利上げ)を決めました。昨年2024年7月に続く利上げとなり、「金利のある世界」への本格的な回帰を感じさせます。

では、「利上げ」は”私たちのお金”にどのような影響をもたらすのでしょうか? 本記事では、利上げの基礎的な知識を説明したうえで、「住宅ローン」、「日本株の株価」、「預金金利」、「個人向け国債」の4項目を中心に、利上げの影響を見ていきます。

2024年の2回の利上げに続き、2025年1月にも「政策金利」が引き上げられました

利上げの基礎をQ&Aでおさらい

Q1. そもそも利上げとは?

A. 日銀が「政策金利」を引き上げること

日銀が今回引き上げたのは、国の「政策金利」です。「政策金利」は、日銀が、景気や物価の安定といった金融政策上の目的を達成するために設定する、短期金利(誘導目標金利)のことを指します。そして、この「政策金利」の変化が、私たちが民間銀行で利用する金融商品(主に預貯金やローンなど)の金利にも影響します。

【参考】日銀が「政策金利」を設定する目的
●景気がよくないとき → 「政策金利」を下げる。金融機関の資金調達コストを下げ、企業や個人がお金を借りやすい状態にすることで経済活動を刺激する。
●景気が過熱傾向にあるとき → 「政策金利」を上げる。金融機関の資金調達コストを上げ、企業や個人がお金を借りる際の金利を上げることで、景気の抑制や物価の安定を目指す。

Q2. 「政策金利」はどれくらい上がった?

A. 「0.25%」から「0.5%」へ

今回日銀は、「政策金利」を「0.25%」から「0.5%」に引き上げました。これにより、「政策金利」は2008年10月以来、17年ぶりの高い水準となります。

Q3. なぜ、今回「政策金利」を上げた?

A. 「賃金と物価の好循環が強まっている」との見解

「政策金利」の基本的な目的は「Q1」の回答にあるような、「景気や物価の安定化」にあります。そして、日銀は今回の利上げの理由として、下記のような点をあげています。

・昨年(2024年)に続いて、企業の賃上げの意欲が強いこと
・基調的な物価上昇率が2%に向けて徐々に上昇していること
・国際金融市場及び国内金融市場は全体として落ち着いた状況であること

今回日銀から公表された「展望レポート(基本的見解)」を見てみると、2026年度までの消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、2024年度は前回の昨年10月時点のレポートでの「+2.5%」から「+2.7%」へ、2025年度は「+1.9%」から「+2.4%」へ、2026年度は「+1.9%」から「+2.0%」へと、いずれも上方修正されました。つまり、昨年2024年10月時点での予測以上にモノの値段が上がっていくと予測されたわけです。これも、今回の利上げの一因になっていると考えられます。

Q4. この先も「政策金利」は上がる?

A. 日銀の見通しどおりの推移ならこの先も利上げを検討

植田日銀総裁は、経済や物価が日銀の見通しどおりに推移すれば、この先も利上げを検討する考えを示しています。いっぽうで、利上げに慣れていない日本経済の実態を考慮すると、半年に1度程度のゆるやかなペースでの利上げとなる見方が一般的です。それを踏まえると、「2025年内」というスパンでは、あと1回の利上げ(0.25%程度の幅)が十分に考えられる状況です。

《利上げの影響1》住宅ローン金利

利上げは私たちの生活にどんな影響を与えるのでしょうか? まず、影響が最も大きくなりそうな「住宅ローン金利」について、筆者の考えを交えながら、少し詳しく見ていきます。

銀行は「短プラ」を引き上げ

「政策金利」の引き上げを受け、三菱UFJ銀行とみずほ銀行は、「短期プライムレート」(以下、「短プラ」)を2025年3月3日より「0.25%」引き上げ、「年1.875%」にすると発表しました。そして三井住友銀行も、2025年3月17日より、同じく「年1.875%」に引き上げると発表しています。このように、メガバンクをはじめとして、多くの銀行が「短プラ」の引き上げを発表しています。

「短プラ」は、銀行が信用力のある企業に適用する、期間1年未満の短期貸し出しにおける最優遇貸出金利のことを指し、変動金利型住宅ローンの基準金利の目安にもなっています(※)。「短プラ」が2025年3月に引き上げられると、2025年4月以降の変動金利型住宅ローンの金利が、各行のルールにしたがって上がることになります。これから変動金利型で住宅ローンを組む人は、これまでよりも高めの金利で返済計画を考える必要が出てきます。

※ネット銀行の多くは、変動金利型住宅ローンの基準金利を、「短プラ」ではなく、「東京銀行間取引金利(TIBOR)」や、そのほかのさまざまな市場金利、他行金利などを基準として決めています。変動金利型住宅ローンの基準金利は金融機関によって異なるので、契約時の書面や公式サイトなどを確認しましょう。

「5年ルール」や「125%ルール」にも要注意

利上げの前に変動金利型住宅ローンを借りていた人の場合、適用金利(基準金利から契約時の優遇幅を引いた金利)が上昇したとしても、実際の返済額がすぐに増えるとは限りません。

たとえば、メガバンク3行は、毎月の返済額の見直しを原則5年後とする「5年ルール」を採用しています(返済額に占める元本と利息のバランスが調整され、返済額が一定に保たれる)。また、5年経過後に返済額を変更する際も、金利にかかわらずそれまでの返済額の125%までとするという「125%ルール」もあります。こうしたルールを設定している金融機関から変動金利型住宅ローンを借りている場合、毎月の返済額が上昇するのはもう少し先の話にはなります。

ただし、「5年ルール」と「125%ルール」には、元本の減りが遅くなったり、総返済額が増えたりするデメリットがあります。ご自身が描いていた返済計画に変更が迫られる可能性があるので注意は必要です。

固定金利に借り換えるべき?

こうした状況から、すでに変動金利型の住宅ローンを借りている人が、将来の返済額増加に備えて、早めに固定金利型住宅ローンに借り換えることも選択肢のひとつになるでしょう。

一般的に固定型は変動型よりも金利が高い傾向があります。各行によって違いますが、現時点では、変動型と固定型(35年固定など)では2%近い金利差が生じる場合があります。変動型から固定型に借り換えると、その分毎月の返済額が増加するわけです。いっぽう、月の返済額が確定することで、教育資金や老後資金の準備など、長期的なライフプランを立てやすくなるメリットはあります。

これは、借り換えだけでなく、これから新規に住宅ローンを借りる人にも当てはまる話ですが、「変動型で借りて、金利上昇に少々不安を抱えつつも、当初の毎月の返済額を低く抑える」か、「変動型よりも少し高い金利の固定型で借りて、将来的な安心を確定させる」かが、判断の基準になります。

現状、住宅ローンを借りている人の7割以上の人が変動金利型を選択しているとのデータもあります。しかし、今後はその傾向に変化が起きる可能性もあります

筆者は、状況を見つつ変動型を継続予定

ちなみに、筆者は某金融機関で変動金利型住宅ローンを借りていますが、現時点では、固定型に借り換える予定はありません。「今後、日本の金利はゆっくり上昇する可能性が高いため、総返済額は今の変動型のほうが抑えられる」と考えているからです。

日銀が目指している「物価上昇率2%」という目標を考慮すると、「2%前後」までは、「政策金利」が引き上げられるとの見方が一般的です。したがって、変動金利型の住宅ローンの適用金利も、「2%程度」まで上昇するのではないかと見ています。このとき、固定金利型住宅ローンの金利は「4%程度」に上がっているでしょう。

ただし、前出のとおり、日銀はゆるやかなペースでの利上げを続ける可能性が高く、仮に「2%前後」まで「政策金利」を引き上げるとしても、最短で5年ほどかかると見ています。その間、日本経済の状況が悪くなれば、前章の「Q1」の回答にあるように、金利を引き下げる可能性も考えられます(その場合、金利が固定される固定型は不利になります)。こうしたことから、現時点で筆者は、変動型での借り入れを続ける考えです。

もちろん、金利上昇の影響は、借入額や返済期間など、人によってさまざまでしょう。金利動向を注視しつつ、複数パターンでシミュレーションし、備えておくことが大切なことには変わりありません。筆者は、状況を見つつ変動型を継続予定

ちなみに、筆者は某金融機関で変動金利型住宅ローンを借りていますが、現時点では、固定型に借り換える予定はありません。「今後、日本の金利はゆっくり上昇する可能性が高いため、総返済額は今の変動型のほうが抑えられる」と考えているからです。

日銀が目指している「物価上昇率2%」という目標を考慮すると、「2%前後」までは、「政策金利」が引き上げられるとの見方が一般的です。したがって、変動金利型の住宅ローンの適用金利も、「2%程度」まで上昇するのではないかと見ています。このとき、固定金利型住宅ローンの金利は「4%程度」に上がっているでしょう。

ただし、前出のとおり、日銀はゆるやかなペースでの利上げを続ける可能性が高く、仮に「2%前後」まで「政策金利」を引き上げるとしても、最短で5年ほどかかると見ています。その間、日本経済の状況が悪くなれば、前章の「Q1」の回答にあるように、金利を引き下げる可能性も考えられます(その場合、金利が固定される固定型は不利になります)。こうしたことから、現時点で筆者は、変動型での借り入れを続ける考えです。

もちろん、金利上昇の影響は、借入額や返済期間など、人によってさまざまでしょう。金利動向を注視しつつ、複数パターンでシミュレーションし、備えておくことが大切なことには変わりありません。

《利上げの影響2》日本株の株価

続いては「日本株の株価」です。一般的に利上げは、株式市場的にはマイナス材料ととらえられます。

金利が高いのであれば、金融機関に預金で預けるか、円建て債券(個人向け国債を含む)を保有すればよく、あえて、値下がりするリスクのある株式投資を積極的に行う必要はない、といった考え方があるからです。では、今回の利上げ局面でもこの考え方を適用できるのでしょうか?

教科書的な考え方では、利上げは株価のマイナス材料ですが……

教科書的な考え方では、利上げは株価のマイナス材料ですが……

まだ株式市場に影響を与えるほどの金利ではない

この考え方が成り立つのは、米国のように、年4~5%ほどの金利が存在する状況においてです。日本は昨年2024年から段階的に「政策金利」を引き上げているといっても、まだ「0.5%」程度。そして、金融機関の預金金利も「0.2~0.3%」といった状況です(後述)。したがって、現時点では、日本の株式市場にとってのマイナス材料となることは考えづらいでしょう。

むしろ、銀行など、資金調達時と貸出時の金利差(利ざや)でビジネスを展開している企業にとっては、より高い金利で貸せるようになるため収益拡大につながります。このように、利上げの恩恵を受ける銘柄が出てくることも考えられます。また、「『政策金利』の上昇=日本経済が徐々に強くなっていき、モノの値段も上昇=もはやデフレではない」といった考え方により、「脱デフレ」のムードが高まる可能性もあります。長らく停滞した日本経済が活性化する雰囲気が強くなれば、株式市場にとってもプラス材料となります。

《利上げの影響3》預金金利

続いては「預金金利」です。「住宅ローン金利」と同様、「預金金利」にも引き上げの動きが出てきています。

「預けていても増えない」が当たり前だった預金金利にも変化の兆し

「預けていても増えない」が当たり前だった預金金利にも変化の兆し

メガバンクの普通預金金利は「年0.2%」に

2025年1月の日銀の利上げを受け、すでにメガバンクは、普通預金金利を「年0.1%」から「年0.2%」に引き上げると発表しています(新しい金利の適用日は、「住宅ローン金利」の項で紹介した「短プラ」の引き上げと同一日)。税金を考慮せずに計算すると、100万円預けた場合に受け取れる利息が、これまでは年間1,000円だったのに対し、今後は年間2,000円となります。

少し前までは、メガバンクの普通預金金利は「年0.001%」が当たり前だったので、比較すると200倍に相当し、かなり金利が上がってきていることがわかります。また、この動きを受けて、地銀、ネット銀行などにも普通預金金利を引き上げる動きが出てきています。

定期預金の金利については、現時点で、メガバンクからの引き上げの発表は出ていませんが、こちらも近々引き上げられることでしょう。一部の地銀やネット銀行では、メガバンクに先んじて、定期預金の金利が引き上げられる動きが出始めています。

「政策金利」が今後も段階的に引き上がるのであれば、預金金利も総じて上がっていく可能性が高く、元本保証で少しずつ増やしたい人にはよい変化と言ってよいでしょう。

もっとも、前項(日本株の株価)とのからみでいうと、預金金利引き上げによる金融市場全体への影響は限定的になると考えます。今後発表されるであろうメガバンクの定期預金金利についても、おそらく普通預金に少し上乗せした程度になると考えられ、「銀行預金に資金が大量に集まる」といった動きにまでは至らないでしょう。定期預金の金利が「5%程度」にまで上がれば話は別ですが、さすがにそこまでの引き上げは考えにくい状況です。

《利上げの影響4》個人向け国債

「預金金利」と同様に、利上げがメリットになりそうなのが、「個人向け国債」です。

現在、日本の長期金利の目安となっている10年物国債の利回りは1.3%ほどで推移しており、「政策金利」と同様に上昇傾向にあります。10年物国債の利回りは住宅ローンの固定金利や、「個人向け国債」の利回りなどに影響します。

国にお金を貸して利子を受け取れる「個人向け国債」。画像は個人向け国債公式サイトより

「個人向け国債」の利率は上昇傾向

2025年2月募集分(2月6日~28日)の「個人向け国債」の適用利率(税引き前)は下記のとおりです。

・変動金利型10年満期……年0.83%(初回の適用利率。適用利率は半年ごとに見直し)
・固定金利型5年満期……年0.89%
・固定金利型3年満期……年0.74%

ちょうど1年前(2024年2月募集分)の適用利率(税引き前)は、変動金利型10年満期が年0.49%(初回の適用利率)、固定金利型5年満期が年0.25%、固定金利型3年満期が年0.05%でしたので、いずれも上昇していることがわかります。

今後も日本の「政策金利」が段階的に上昇するというシナリオであれば、半年ごとに適用利率が見直される変動金利型10年満期の利率も、段階的な上昇が見込めます。また、固定金利型(5年、3年)の適用利率も、毎月の募集タイミングで上昇していくと考えられます。

「個人向け国債」は国が元本や利子の支払いに責任を持っています。少しずつでもよいので、安全にお金を増やしたいという人の選択肢として、魅力が高まっていると言えるでしょう。

▼「個人向け国債」は、証券会社や銀行で購入が可能です。ネット証券のなかには、「個人向け国債」の購入額に応じたキャッシュバックやポイント付与などのキャンペーンを実施しているところもあります。

【まとめ】円安? 円高? 物価は?

利上げの影響については、このほかにも、「外国為替」や「物価」といった面で考えられます。

円安? 円高?

たとえば、異なる2つの通貨(ドルと円など)を交換することを指す「外国為替」で、日本を主体として考えた場合、

「政策金利」の上昇 → 他国との金利差が縮小 → 円を持つ人が増え、円高に向かう

という教科書的な考え方があります。米国、ユーロ圏、カナダなどの欧米諸国が、段階的な利下げを実施しているという事情もあり、現在の「円安」の流れが変わっていく可能性も考えられるわけです。

ただし、日本と各国の金利差がすぐに縮まるとは考えにくい状況でもあり、予測は非常に難しいのが実情です。たとえば、米国は経済が安定し株も強いことから、想定よりも利下げのスピードが遅くなるとの見通しがあります。そのため、「日米の金利差の縮小には時間がかかる」との見方が強まれば、結局は「円安ドル高」の流れが強まるでしょう。このように、「外国為替」はなかなか自国の経済や金融政策だけでは読めない部分があります。

賃金が上がれば……

「物価」についても難しい面があります。教科書的な考え方なら、「利上げは物価の下落につながる」ということになりますが、前出のとおり、日銀は、2%の物価上昇率を目標に設定しています。つまり、「毎年2%ずつモノの値段が上がる状態にする」という大きな方向性を掲げており、今後も少なからず物価は上昇していくものと考えられます。

日本は、30年間もの長い間、物価が継続的に下落するデフレ状態が続いていました。若い世代の人はなかなか理解できないかもしれませんが、20数年前、ハンバーガーが1個50円台、牛丼1杯200円台で食べられた時代がありました(現在はハンバーガー1個170円程度、牛丼1杯500円程度です)。モノやサービスの値段が下がり、企業の利益が減り、結果的に働く人の賃金にも影響が出ていた時代が続いていたのです。

今は、こうしたデフレ状態からの過渡期であり、さまざまなゆがみや痛みが発生している状況と考えます。言わば、値上げできなかったデフレ時代の”ツケ”を支払っている状況と言えるのかもしれません。

政府が重要視している実質賃金上昇率(名目賃金から物価変動の影響を除いた賃金の変動率)がコンスタントにプラス推移となり、目に見えて「手取り」が増えるような”よいインフレ”状況となれば、「景気のよさ」を実感できる人も増えることでしょう。