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住宅ローンに忍び寄る金利上昇の足音、変動から固定に借り換えるべきなのか

出典:JBpress

2024年を振り返る:返済額が増えても元金減少ピッチが速くなる固定型のほうが安心という考え方も【JBpressセレクション】

2024年も残すところあとわずかになりました。今年、注目されたニュースや出来事についてJBpressでよく読まれた記事をもう一度お届けします。今回は3月の日本銀行によるマイナス金利政策解除を受けて、「正常化」に向かい始めた金融政策が及ぼす影響に関する記事です。(初出:2024/1/29)※内容は掲載当時のものです。

 2019年以降、長期金利の上昇を受けて固定金利型住宅ローンの金利が上昇する一方、変動金利型は超低金利が続いてきたが、2024年になっていよいよ変動型の住宅ローンの金利が上がるのではないかという観測が強まっている。これから住宅ローンの利用を考えている人も、すでに変動型を利用している人も、金利上昇への対応が求められることになりそうだ。いったいどうすればいいのか、住宅ジャーナリストの山下和之氏が解説する。(JBpress編集部)

短期プライムレート上昇の前に「最優遇金利」引き上げの可能性も

 住宅ローンには大きく分けると、市中の金利動向にかかわらず金利が変わらない固定金利型と、市中の金利動向によって適用金利が変わる変動金利型がある。固定型は長期金利に連動し、変動型は短期金利に連動する。

【図表1】にあるように、長期金利のベースになる長期プライムレート(銀行が優良企業向け貸し出す際の最優遇金利)は、1.00%以下の超低金利が続いていたが、2019年には1.00%を超えて、その後もジワジワと上がり続けてきた。そのため、固定型の住宅ローン金利も上昇し、代表格ともいうべき「フラット35」の金利は2019年には1.11%まで下がったのが、2023年後半には1.96%と2%近い水準まで上がった。

 それに対して、変動型の基準となる短期プライムレートは日本銀行の大規模緩和策、マイナス金利政策のもと、2008年以降16年近く1.475%の低水準で推移しており、2024年1月現在も1.475%が続いている。


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 変動型のローン金利は、多くの金融機関で短期プライムレートに1.00%を上乗せした金利が基準金利となっている。メガバンクのみずほ銀行を例にとると、短期プライムレートの1.475%に1.00%を上乗せした2.475%が基準金利で、そこから金利引き下げが適用されて、最優遇金利は2.10%低い0.375%となっている。

 その0.375%が長い間続いているが、2024年には短期プライムレートの上昇によって、最優遇金利も上がる可能性が高いとみられているわけだ。

 しかも、短期プライムレート上昇の前に、金利引き下げ幅の縮小によって、最優遇金利の引き上げが実施される可能性もある。基準金利の上昇よりは、金利引き下げ幅の縮小による適用金利上昇のほうが先にやってくるのではないかという見方もある。

 いずれにせよ、いま変動型の住宅ローンを利用している人やこれから利用を考えている人は、今後の金利動向、金利引き下げ幅の圧縮などの動向を注視しておく必要がある。まずは現在、変動型を利用している人の注意点を整理しておこう。

変動型のローン金利は、多くの金融機関で短期プライムレートに1.00%を上乗せした金利が基準金利となっている。メガバンクのみずほ銀行を例にとると、短期プライムレートの1.475%に1.00%を上乗せした2.475%が基準金利で、そこから金利引き下げが適用されて、最優遇金利は2.10%低い0.375%となっている。

 その0.375%が長い間続いているが、2024年には短期プライムレートの上昇によって、最優遇金利も上がる可能性が高いとみられているわけだ。

 しかも、短期プライムレート上昇の前に、金利引き下げ幅の縮小によって、最優遇金利の引き上げが実施される可能性もある。基準金利の上昇よりは、金利引き下げ幅の縮小による適用金利上昇のほうが先にやってくるのではないかという見方もある。

 いずれにせよ、いま変動型の住宅ローンを利用している人やこれから利用を考えている人は、今後の金利動向、金利引き下げ幅の圧縮などの動向を注視しておく必要がある。まずは現在、変動型を利用している人の注意点を整理しておこう。

金利上昇で未払い利息が溜まれば、元金が増える恐ろしい事態に

 変動型の住宅ローンは、金利動向によって半年に1回適用金利を見直すことになっている。ただし、あまり頻繁に返済額が変わると計画を立てにくいので、返済額の見直しは5年ごととされ、5年間は返済額が変わらない。5年後に金利上昇で返済額が増えるときには、増額率を25%までとする決まりもある。

 返済額が変わらない5年の間に金利が変わったときには、返済額に占める利息分と元金分を調整することになる。金利が上昇した場合には、利息分が増え、そのぶん元金分が減少し、元金の減り方が遅くなる。反対に、金利が下がったときには、利息分が減って、元金分が増え、元金の減り方が速くなる仕組みだ。

 たとえば、借入額5000万円、35年元利均等・ボーナス返済なしの住宅ローンだと、【図表2】にあるように、当初5年間の返済額は12万7049円になる。

 12回目の返済額の内訳は利息分が1万5241円、元金分は11万1808円で、12回目終了後のローン残高は4866万0604円だ。


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 13回目の適用金利が0.375%で変わらない場合には、利息分の計算はこうなる。

【4866万0604円(ローン残高)×0.00375(0.375%)÷12(カ月)≒1万5206円】

 12回目に比べて利息分が少し減って、そのぶん元金分が増え、ローン残高は4854万8761円に減少する。

 それが、金利が0.575%に上がると、利息分の計算はこうなる。

【4866万0604円(ローン残高)×0.00575(0.575%)÷12(カ月)≒2万3317円】

 利息分が2万円台に増えて、元金分は10万円台に減少、そのぶんローン残高の減り方が遅くなる。

 さらに、金利が1.375%まで上がると、利息分が5万円台に増えて、元金分は7万円台に減り、2.375%だと利息分が10万円近くになり、元金分は3万円ほどに減少。元金がほとんど減らない状態になる。

 最悪の場合が、3.175%になったときだ。

【4866万0604円(ローン残高)×0.03175(3.175%)÷12(カ月)≒12万8748円】

 利息分だけで毎月返済額の12万7049円を上回り、1699円不足してしまう。これが「未払い利息」といわれるもので、毎月約定通りに返済しても、この未払い利息が残り、元金が減るどころか、未払い利息が溜まって、実質的に元金が増えてしまうという恐ろしい事態になる。

変動から固定に借り換えると返済額はどのくらい増えるのか

 現実的に、すぐにも3%台の金利になることは考えにくいが、0.5%、1.0%程度の上昇は十分に考えられるので、元金の減り方が遅くなってしまう。毎月返済額は変わらなくても、元金がなかなか減らないため、変動型の超低金利メリットが損なわれる。

 どの段階で決断するのかは考え方にもよるだろうが、場合によっては変動型から固定型に切り換えて、それ以上に元金の減り方が遅くならないようにするのがいいのではないだろうか。

 変動型から固定型に借り換えると、適用金利が上昇し、返済額が増えるケースが多くなるだろうが、それは安心のためにはある程度仕方のないことと考えるしかない。実際、【図表3】にあるように、全期間固定金利型に借り換えた人では借り換えによって返済額が増えたという人が24.5%に達している。


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 では、変動型から固定型に借り換えると、返済額がどれくらい増えるのか。借入額5000万円、35年元利均等・ボーナス返済なしで、1年後に借り換えを実行した場合にどうなるのかを試算したのが【図表4】だ。


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 0.375%の変動型だと毎月返済額は12万7049円だが、固定金利期間選択型の10年固定に借り換えると14万1190円に増え、増額率は11.1%。全期間固定金利型の「フラット35」だと16万1261円になり、26.9%の増額になる。

 けっこうな負担増だが、それでも固定金利期間選択型の10年固定の場合、借り換えると毎月返済額は14万1190円に増えるものの、利息分は4万0424円で、元金分が10万0765円になって、月々10万円以上元金が減ることになる。

 それに対して、変動金利型のままで金利が0.4%上がると元金分は先の【図表2】にあるように9万円台に減るので、借り換えたほうが元金の減り方が速くなることが分かる。多少返済額が増えても、元金減少ピッチが早くなる固定型のほうが安心という考え方もあるのではないだろうか。

 そのあたりをどう考えるのかは、それぞれの価値観次第だろうが、変動型を利用していて、金利が本格的に上がり始めたら、固定型へ借り換えてもいい。

 また、全額固定金利型に借り換えると負担増が大きくなるので、固定型と変動型をミックスしたプランを利用する方法もある。これなら、負担増をある程度抑制しながら、一定の安心感を得ることができるので、今後の選択肢としては注目しておいていいかもしれない。

一定レベルの金利上昇でも返済に問題がないか確認しておきたい

 次に、これから変動型の住宅ローンの利用を考えている人は、借り入れ時の金利が上昇する可能性があるので、その場合には返済額がどうなるのか、それでも家計などに問題がないかなどを確認しておく必要がある。

【図表5】は、借入額5000万円、元利均等・ボーナス返済なしの条件で金利が0.375%から上がった場合の返済額を0.2%刻みで試算している。


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 0.375%だと毎月12万7049円だが、0.575%になると13万1456円になって、3.5%の増額だ。この程度ならそんなに大きな影響はないかもしれないが、1.0ポイント上がって1.375%になると15万0049円になり、18.1%の増額。返済額が2割近く増えてしまう。

 家計の安全性を重視して、返済負担率(年収に占める年間の返済額の割合)を25%とした場合、毎月12万7049円の返済額だと610万円の年収があれば大丈夫だが、15万0049円だと720万円の年収が必要になる。年収によってはマイホーム購入が難しくなるケースが出てくるかもしれない。

 その際注意しておかなければならないのは、住宅ローンの金利はローンの申し込み時点の金利ではなく、購入物件の引き渡しを受けて、融資が実行される期日の金利が適用されるという点だ。

 中古住宅や完成済みの物件だと、契約後さほどの時間をおかずに引き渡しを受けることができるので、現在の金利で利用できる可能性が高いが、大規模な新築マンションだと完成・引き渡しが1年、2年も先になることがある。そうなると、金利が上がっている可能性が極めて高くなる。

 それだけに、一定レベルの金利上昇でも返済に問題がないか、現在より高めの金利でも試算して確認しておくのが安心だ。できれば、1%から2%高い金利で試算して、家計管理に問題がないかどうかをチェックしておきたい。

 いずれにしても、変動型住宅ローンの利用に当たっては、金利動向をリアルタイムに把握して、臨機応変に対応できるようにしておくことがこれまで以上に大切になってきそうだ。