不動産の任意売却を検討しているものの、手続きや細かいルールが難しく、なかなか自分だけでは進められないし、誰に相談したらよいのかもわからない。
そんな人に向けて、今回は任意売却の相談先の選び方から、選ぶ際の注意点まで詳しくご紹介していきます。

任意売却の相談先は「不動産会社」、「弁護士や司法書士」、「銀行（金融機関）」の３つ

任意売却の相談先には、主に以下の３つが挙げられます。

・不動産会社

・弁護士や司法書士

・銀行（金融機関）

それぞれにメリットとデメリット、強みや料金の差があるので詳しく解説していきます。

不動産会社

まず１つ目の候補が、不動産会社です。任意売却は、一般的な不動産取引と同様の手続きでおこなわれることから、不動産のプロとも言える不動産会社に相談することが候補として挙げられます。

不動産会社に相談する場合のメリット、デメリットは以下の通りです。

メリット：任意売却専門の会社もあり、不動産の売買について詳しい

不動産会社の中には任意売却を専門としている会社もあるので、不動産の売買に関するノウハウを十分に持っている点がメリットと言えます。

そもそも任意売却は、ただ不動産を売却するだけの手続きではない、というのはご存知でしょうか。任意売却をおこなう際、まずは不動産の債権者である金融機関から、任意売却に同意してもらう、というステップが必要になります。

このステップで金融機関から任意売却を渋られると元も子もないため、任意売却に関するノウハウを豊富に持っていたり、金融機関との交渉にも慣れている不動産会社に相談したほうが安心できるでしょう。

また、任意売却専門の不動産会社であれば、任意整理が相談できる弁護士や司法書士などへも紹介してもらえることもあるので、任意売却のプロとしてあらゆる視点から力強く支えてもらえます。

デメリット：一般的な不動産会社では任意売却に対応していない場合がある

不動産会社に相談することのデメリットは、任意売却に対応していない会社も多く存在することです。不動産会社に相談するメリットでも触れたように、任意売却はただ不動産を売却するだけではなく、専門的な知識や金融機関への交渉スキルなども必要になります。

そのため、一般的な不動産会社の場合だと任意売却は専門外とされることもあるので、任意売却に対応してもらえる不動産会社の見極めが重要となります。

弁護士や司法書士

任意売却の相談先の候補２つ目は、弁護士や司法書士です。法律の専門家である弁護士や司法書士に相談するのもおすすめです。
弁護士や司法書士に相談する場合のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット：任意整理や自己破産などの債務整理の際に頼りになる

任意売却には、債務整理という側面もあるので、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談すると、専門家の視点からさまざまなアドバイスがもらえるでしょう。また、任意売却後も引き続きローンの残債が支払えないという場合は、弁護士や司法書士に依頼して、任意整理や自己破産などの債務整理をしてもらう必要があるので、こうした場面でも頼りになります。

しかし、弁護士や司法書士は不動産取引に関しては手出しができず、実際の売買に携わることはできません。不動産市場での売買や媒介などを行うには、宅地建物取引業の登録が必須となりますが、弁護士や司法書士が所属する事務所の多くは、宅地建物取引業の登録をしていないところが多いからです。

そのため、弁護士や司法書士に相談しても、最終的には不動産会社での手続きを紹介されることが多いので、弁護士や司法書士はあくまでも『相談』する相手として検討したほうがよいでしょう。

デメリット：高額な費用が発生する可能性がある

弁護士や司法書士は法律のプロフェッショナルではありますが、そのぶん、相談することで高額な費用が発生する可能性があります。弁護士事務所などでは、多くの場合『相談料』や『着手金』を支払う必要がありコストがかさむため注意が必要です。

銀行（金融機関）

任意売却の相談先の候補３つ目は、銀行（金融機関）です。住宅ローンを借りているわけでなので、その債権者である金融機関に相談するのも一つの手段です。そもそも、任意売却をおこなう際は不動産の債権者である銀行に許可を取る必要があるので、その際に一緒に任意売却の相談もしようと考える人も多いのではないでしょうか。

銀行に相談する場合のメリットとデメリットを解説します。

メリット：住宅ローンの返済が困難になった際にアドバイスをくれる

金融機関の場合は、住宅ローンが支払えなくなった際の相談に乗ってくれたり、アドバイスをしてくれることが多いです。任意売却を取り扱っている業者を紹介してくれることもあります。

デメリット：任意売却を認めない、積極的でない場合がある

銀行に相談する場合のデメリットは、銀行（金融機関）によっては任意売却を認めてくれないところがある、または任意売却に積極的でない場合があるということです。

これは、任意売却により所有者と債権者の利害が対立してしまうためです。債権者である銀行（金融機関）は当然、売却代金を少しでも多く回収したいと考えますが、所有者は売却代金から引越し費用などを捻出することになるので、この時点ですでに両者の希望が一致することはなくなりますよね。

債権者である銀行（金融機関）は、任意売却をおこなう業者を紹介してくれますが、銀行（金融機関）から紹介を受けている以上、その業者は少なからず銀行（金融機関）へ多少の配慮をおこなうので、必ずしも所有者の味方になってくれるとは限らないでしょう。

任意売却の相談先の選び方は債務整理に強く信頼・実績のある業者を選ぶこと

これまで、任意売却の相談先として３パターンを紹介してきましたが、この3パターンの中であればどこでもよいというわけではなく、それぞれの中でも見極め方があります。ポイントを４つご紹介します。

任意売却に強い業者を選ぶ

１つ目のポイントは、任意売却に強みがある業者を選ぶことです。任意売却の手続きには、売却に関する知識だけでなく、金融機関との交渉が発生するほか、売却の対象となる不動産の査定価格や、任意売却することになった事情・環境によって、おこなう手続きが異なります。

そのため、目安として任意売却の実績が１００件以上あるような業者であれば、数多くのパターンでの任意売却の経験があるという意味で安心できるでしょう。

弁護士や司法書士など専門家と提携している業者を選ぶ

任意売却は、不動産を売却するだけですべての債務がなくなるわけではなく、場合によっては、任意売却後も住宅ローンの残債の返済義務のため、任意整理や自己破産などの債務整理が発生します。

この時、知識や実績があれば不動産会社でもそのまま債務整理のアドバイスをおこなってくれる場合もありますが、債務整理に強い弁護士や司法書士などの専門家と提携している業者であれば、法律の専門家へその後の対応を相談できるよう手配してくれるため、長期的に見て安心して依頼できるでしょう。

丁寧な対応をしてくれる業者を選ぶ

任意売却の相談先の見極め方の３つ目は、丁寧な対応をしてくる業者かどうかです。任意売却の手続きには法律が絡んでくるので、専門家でない一般人にはわからないこともたくさんあるでしょう。

ですが、業者によってはその知識差を利用して自分たちの都合がいいようにうまくいいくるめてくる業者もあるかもしれません。そうした悪徳業者に騙されないために、最初に電話やメールで任意売却について相談してみることをおすすめします。

電話やメールでの対応が丁寧だったり、親身になって相談に乗ってくれるようであれば、実際に業者へ赴いてみるとよいですね。電話やメールで相談した際に、やたらと来店を促してくるようであれば、あまりよい相談先とは言えないでしょう。

アフターフォローが手厚い業者を選ぶ

任意売却の相談先の４つ目のポイントは、アフターフォローの手厚さです。任意売却をおこなった後、引き続きローンの残債の返済を続けながらどのように暮らしていくかという点にもアドバイスをくれるような業者であれば安心できますね。

任意売却のアフターフォローには、任意売却をした家にそのまま住むことができる『リースパック』というサービスや、任意売却での売却価格から引越し費用の支払いを受けられるサービスなどがあります。こうした選択肢を選べるかどうかは、任意売却の手続きをしてくれた業者が、債権者である銀行や金融機関へどれくらい交渉してくれるかどうか次第なので、アフターフォローが手厚い業者を選んだほうがよいでしょう。

任意売却の相談では今後のスケジュールや任意売却後の必要な費用について確認する

任意売却の相談をする際は、今後の流れを確認することが重要です。スケジュールや、任意売却後にどれくらいの費用が必要になるか、それぞれポイントを抑えていきましょう。

任意売却や引越しのスケジュールについて確認する

任意売却は競売と並行して進められ、競売の申立てがあると、原則として任意売却はできなくなります。つまり、任意売却には期間の制限があるので、迅速に諸手続きを進める必要があります。

引越し費用の支払いについて確認する

現在住んでいる家を任意売却するということはすなわち、次の家への引越しが発生することになります。そのため、任意売却もしつつ次の家への引越し費用も工面する必要があります。任意売却をして、その売却代金を自身の引越し費用に利用できることもあるので、この仕組みを使えるのか、使えないならどのような手続きが必要になるか事前に確認しましょう。

任意売却後のローン返済や債務について確認する

任意売却後にもローンの残債の返済が必要となりますが、支払いをどのようにおこなうか、また、支払いができなくなった場合にどうなるのかなどを事前に銀行（金融機関）や弁護士・司法書士などに相談しておくと安心です。
支払いができなくなった場合は連帯保証人が支払い義務を負うことにもなるので、自分以外にも影響が及ぶことも考慮して、任意売却後の債務などはあらかじめ確認をしておきましょう。

任意売却の相談先選びは悪徳業者に注意して信頼・実績のある業者を選ぼう

任意売却をおこなうことになり不安もたくさんあるかと思いますが、任意売却は多額のお金や法律も絡んでくるので、1人で抱え込まず、実績があり信頼できる相談先をしっかりと見極めてから手続きを進めましょう。