住宅ローンに関わる抵当権と競売との関係
本記事では、住宅ローンに関わる抵当権と競売との関係ついて解説します。
抵当権とは?
抵当権とは、借金などの債務を※担保するために、債務者(お金を借りた人)が所有する不動産などの財産に対して設定される権利のことです。これにより、債務者が借金の返済ができなくなった場合、債権者(お金を貸した人)はその不動産を競売などで売却して、優先的に債務を回収することができます。
抵当権を設定するメリット
抵当権を設定するメリットは、主にお金を貸す側(債権者)にとって有利ですが、借り手(債務者)にも一定のメリットがあります。以下、それぞれの立場からのメリットを説明します。
1.債権者(お金を貸す側)のメリット
抵当権を設定する主なメリットは、債権の保全です。
【返済が滞った際の担保確保】
抵当権を設定することで、借り手がローンを返済できなくなった場合でも、不動産を競売にかけてその売却代金から優先的に債権を回収することができます。このため、貸し倒れのリスクを減らすことができます。
【優先的な回収権】
抵当権を持っていると、借り手が他の借金をしていても、競売にかけられた不動産の売却代金から優先的に債権を回収できます。これは、無担保の貸付と比較して非常に大きなメリットです。
【リスク管理の向上】
抵当権が設定されている場合、貸し手はリスクが低いと判断し、安心して資金を貸し出すことができます。結果として、貸し手にとって安定した資金回収手段を確保できます。
2.債務者(お金を借りる側)のメリット
抵当権を設定することで、借り手にも一定のメリットが存在します。
【低金利での融資を受けやすい】
抵当権を設定することにより、貸し手側のリスクが軽減されるため、無担保のローンに比べて金利が低くなることがあります。住宅ローンなど長期にわたるローンでは、これが大きなメリットとなり、返済総額の負担を減らすことができます。
【高額な融資を受けやすい】
抵当権を設定することで、貸し手は担保として不動産を確保できるため、借り手はより高額な融資を受けやすくなります。特に住宅ローンでは、不動産が担保になることで大きな借入が可能となり、マイホーム購入などが実現しやすくなります。
【長期返済プランを組みやすい】
抵当権付きの住宅ローンなどは、通常返済期間が長く設定されます。これは、借り手が無理なく返済計画を立てやすいという点で有利です。毎月の返済額が抑えられるため、家計への負担も軽減されます。
【所有権は借り手に残る】
抵当権は、あくまで担保にすぎないため、借り手は不動産の所有権を保持したまま利用し続けることができます。抵当権が設定されていても、不動産の使用や居住には影響がありません。
抵当権を設定するデメリット
抵当権を設定するデメリットは、主に借り手(債務者)に影響しますが、債権者にとっても一定のリスクがあります。以下、それぞれの立場から見た抵当権設定のデメリットを説明します。
1.債務者(お金を借りる側)のデメリット
◼︎不動産が自由に処分できなくなる
【制約が生じる】
抵当権が設定された不動産は、簡単に売却や譲渡ができません。たとえば、住宅ローンを返済している途中で家を売りたくなっても、抵当権がついたままでは制限がかかり、売却のハードルが高くなります。通常、売却時にはローンの一括返済が求められます。
◼︎返済が滞った場合、競売のリスク
【不動産の喪失】
住宅ローンなどの返済が滞ると、最終的に不動産が競売にかけられるリスクがあります。競売にかけられると、市場価格よりも安く売却されることが多く、借り手にとっては経済的損失が大きいです。また、競売にかけられること自体が借り手にとって心理的負担になることもあります。
◼︎競売後も残債が残る可能性
【残債の負担】
競売で不動産が売却された場合、その売却代金が住宅ローン残高に満たないことがあり、残りの債務(残債)は借り手が返済し続けなければならないケースがあります。この場合、家を失った上に返済義務が残るため、借り手の負担が大きくなります。
◼︎費用がかかる
【設定や抹消に費用が発生】
抵当権の設定や抹消には登記費用がかかります。また、司法書士への依頼が必要な場合は、その報酬も発生します。これらの費用が借り手の負担となります。
2.債権者(お金を貸す側)のデメリット
◼︎競売の手続きが時間と手間を要する
【時間がかかる】
借り手がローンを返済できなくなった場合、競売手続きを進めるには裁判所の手続きを通さなければならず、時間と手間がかかります。競売の申し立てから実際に売却まで数ヶ月以上かかることが一般的です。
◼︎競売での回収額が不十分な場合がある
【市場価格より安く売却されることが多い】
競売は通常、市場価格よりも安く売却される傾向があり、その結果、回収できる金額が債権(貸し付けた金額)に満たない場合があります。特に不動産価格が低下している場合は、貸し倒れリスクが高まります。
◼︎不動産の管理リスク
【管理コストの発生】
競売に至るまでの期間、貸し手が不動産を管理する必要が生じることがあります。たとえば、空き家になった物件の維持管理や固定資産税の負担が発生することもあり、貸し手にとって追加のコストとなります。
3.借り手・貸し手の共通のデメリット
◼︎不動産価値の変動リスク
【不動産価格の下落】
借り手にとっても貸し手にとっても、不動産の価値が下がるリスクは大きなデメリットです。不動産価格がローンの残高よりも低くなってしまう「アンダーウォーター(債務超過)」の状態になると、借り手がローンを返済しても資産価値が残らず、貸し手は競売時に十分な回収ができなくなる可能性があります。
抵当権の設定費用は?
抵当権設定費用は、住宅ローンなどで不動産に抵当権を設定する際に発生する諸費用を指します。主に以下の項目が含まれます。
1. 登録免許税
抵当権を設定する際に、法務局に抵当権を登記する必要があり、その際にかかる税金です。
- 税率: 抵当権の設定金額(担保としての金額)の×0.4%です。
- 例えば、2,000万円の抵当権を設定する場合、登録免許税は 2,000万円 × 0.004 = 8万円 となります。
2. 司法書士報酬
抵当権設定の登記は専門知識が必要なため、多くの場合、司法書士に依頼します。このときに発生する報酬です。
- 費用の目安: 司法書士報酬は事務所によって異なりますが、一般的に2万円〜5万円程度が相場です。報酬には、登記手続きの代行や書類作成が含まれます。
3. その他の費用
- 印紙税: 抵当権設定契約書を作成する際、契約書に貼付する印紙税が発生します。印紙税は契約書の金額によって変わりますが、通常数千円程度です。
- 証明書取得費用: 不動産登記簿の写し(登記事項証明書)を取得する費用が発生する場合があります。1通あたり数百円〜1,000円程度です。
4. 金融機関の手数料
金融機関が抵当権の設定に際して事務手数料を請求する場合があります。これは金融機関ごとに異なりますが、数万円程度が一般的です。ローン契約の際にこの手数料も確認することが重要です。
担保とは?
担保(たんぽ)とは、債務者が債権者に対して借金や義務を履行することを保証するために提供する財産や権利のことです。
簡単に言えば、借金などの返済ができなくなった場合に、債権者がその損失を補うための保険のような役割を果たすものです。
担保には主に以下の2種類があります。
1. 物的担保(ぶってきたんぽ)
物的担保は、特定の財産を担保として提供するものです。債務者が返済できない場合、債権者はその財産を売却して債務の回収にあてることができます。代表的なものには以下があります。
- 抵当権: 不動産などの財産に設定される担保で、返済が履行されない場合に、その不動産を競売して債務を回収します。
- 質権(しちけん): 動産(例えば、宝石や骨董品)や債権などを担保として提供し、債務が履行されない場合にはその動産を売却して債務を回収します。
2. 人的担保(じんてきたんぽ)
人的担保は、債務者本人以外の第三者が債務の履行を保証するものです。もし債務者が返済できない場合には、担保人が代わりに債務を支払います。代表的なものには以下があります。
- 連帯保証人: 債務者が返済できない場合に、保証人が債務者と同じ責任を負い、債務を履行します。
担保は、債権者にとっては債務の回収を確実にするための手段であり、債務者にとっては信用を得てお金を借りやすくする手段でもあります。担保を提供することで、債権者はリスクを減らし、債務者は有利な条件で融資を受けることができます。
競売との関係
抵当権と競売は密接に関連しています。
抵当権は、債務者が借金の返済ができなくなった場合に、債権者が債務を回収する手段として使われる権利であり、その最も典型的な行使方法が「競売」です。
抵当権と競売の関係
◼︎抵当権の設定
抵当権は、通常、債務者が不動産などを担保にして借金をする際に設定されます。抵当権は不動産登記簿に登録され、これにより債権者はその不動産を担保として確保することができます。
◼︎返済の不履行(債務不履行)
債務者が借金の返済を期日までに履行できなくなった場合、債務不履行(デフォルト)が発生します。このとき、債権者は抵当権を行使することができます。
◼︎競売の申立て
債務不履行が発生すると、債権者は裁判所に対して不動産の競売を申立てることができます。競売とは、裁判所が不動産を売却し、その売却代金を債権者に分配する手続きのことです。
◼︎競売手続き
裁判所によって不動産が競売にかけられます。入札者は不動産を購入するために入札を行い、最高額で落札された入札者がその不動産を購入します。
◼︎売却代金の分配
競売で得られた売却代金は、まず抵当権を持つ債権者に対して優先的に支払われます。抵当権者は、この売却代金をもって債務を回収します。もし売却代金が債務を上回る場合、残額は他の債権者や債務者に返還されます。
このように、抵当権を設定した債権者が、貸したお金を回収するために担保とし
預かっていた不動産を競売にかけることを、担保不動産競売(たんぽふどうさんけいばい)といいます。
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