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住宅ローンを「50年」で借りて、老後に5000万円が貯まる“魔法の戦略”とは?
出典:DIAMOND online住宅ローンを「50年」で借りると、なぜ「老後に5000万円」が貯まるのか? 首都圏のマンション高騰でパワーカップルが陥りがちな変動金利のリスクを回避し、むしろ資産を増やす逆転の発想があります。「50年ローン」と「35年ローン」の“違い”を活用した、経済評論家が明かす“魔法の戦略”の秘密とは?(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
マンション高騰時代の
賢い住宅ローン戦略
不動産価格が高騰しています。不動産経済研究所の調べによると今年度上期の首都圏の新築マンションの平均価格は一戸あたり9489万円です。東京23区に限ると1億3309万円ともう手を出せる感じがしなくなります。
同じ東京23区の中古価格は、東京カンテイの価格動向によれば70平方メートルで1億1034万円になります。もはや都内にマンションを買える人は富裕層かパワーカップルだけというレベルに高騰しているのです。
実際、共働き夫婦が共同ローンを借りてマンションを購入するケースが増えているそうです。しかも最近流行の50年変動金利型住宅ローンという超長期のローン契約でこのような物件を買う場合、購入者にはどのようなリスクがあるのでしょうか?
実はこの話、経済評論家としてはよく周囲から相談を受ける身近なテーマでもあります。この記事では首都圏でマンションを購入せざるをえない人向けに、そのリスクと、リスクを回避する「まるで手品のような購入戦略」について解説したいと思います。
さて仮に東京23区でパワーカップルが70平方メートル、1億1000万円の中古タワーマンションを購入するとします。そのうち住宅ローンの借入額が9000万円だとします。すると50年の変動金利型住宅ローンなら最頻金利(取り扱い金融機関の中で最も多い金利)が0.675%ですから、毎月の返済額は単純計算で約17万7000円になります。
ふたりとも正社員として安定した収入があり、ふたりで半分ずつ、毎月8万円の支払いならなんとかなりそうだと考えたとしましょう。
では、そのようなカップルにはどんなリスクがあるのでしょうか?3つのリスクがあることを忘れてはいけません。
まず第一に変動金利ですから金利上昇のリスクがあります。実際、日本経済の環境を考えるとこの先の金利は上昇傾向になるでしょう。仮に1%金利が上がったとすると毎月の返済額は約22万2000円になります。ひとりあたりの返済額が毎月3万円以上増えてしまいますね。
リスクとしては、この先の金利上昇がプラス1%では済まない確率のほうが高いのです。実際、50年の固定ローンの金利は1.99%と変動金利よりも1%以上高く設定されています。この金利上昇リスクを考慮して返済計画を立てることが重要です。
次に不動産相場が下落するリスクを考える必要があります。高騰する首都圏のマンション価格は妥当な水準なのでしょうか?
ここは経済評論家の間でも意見が分かれるところですが、私は今の高騰するマンション価格はある程度妥当な水準だと考えています。というのは、高齢化が進んだ日本では駅近のバリアフリーのマンションには根強い需要があるからです。
よく中国人投資家が投機で買っているのではないかという意見がありますが、一部の湾岸エリアの物件を除き実際は購入の9割は実需で買われています。
価格高騰の原因はむしろ供給面にあります。原材料費、人件費ともに高騰する中で建設コストが上昇しているうえに、利便がよい立地でまとまった土地がなかなか出てこない関係で、新たに供給されるマンションが需要に比べて少ないのです。
結果として売れ筋になっているのが築浅の中古マンションです。だから中古マンション価格も1億円を超えている。これが今起きていることなので、この先、団塊ジュニアが後期高齢者になるころまでは実需が続くだろうと私は予測しています。
ただ価格崩壊リスクは常に考えておく必要があります。たとえば今、AI半導体ブームで株価が高騰しています。こちらのバブルは崩壊する可能性が十分にあります。株式市場が過熱から暴落へと移れば、その被害は必ず不動産市場にも波及します。買い手が激減して不動産価格も下落するリスクは考えておく必要があります。
この例のように1億1000万円で購入した中古マンションも新築価格は8000万円台だったかもしれません。株式市場が崩壊した段階でそれくらいの価値減少は起きうると覚悟しておくべきです。
もしそうなった場合、オーバーローンといって残債が物件の売却額を下回る状況になります。わかりやすくいうと、リスクとしてはもし年収が減ったりした場合でも物件を売却できなくなるのです。
もちろん金融ショックが起きたとしても、毎月の返済額をきちんと返済していけるのであれば問題はありませんが、それ以外の選択肢が狭まるという意味でも、不動産の価格下落リスクは想定しておくべき問題です。
そして3つめに、あまり考えたくないかもしれませんが離婚リスクが存在します。夫婦仲がいいとしても、日本人カップルのうち3組に1組は将来確率的に離婚するというデータがあります。
共同で住宅ローンを抱えた場合、離婚の段階で現実的にはどちらかがそのローンを引き取ることになるでしょう。結局のところ「夫婦で負担すれば毎月の返済額が8万円だ」という考えでは3組に1組が将来立ち行かなくなるのです。
さて、このようにリスクを解説すると、「わかった。もう不動産は買えないというのが結論だ」とお考えになるかもしれません。しかしここが経済の面白いところです。発想を変えることでパワーカップルが東京23区に1億円を超えるマンションを購入することは戦略的には可能だという話をここからさせていただきます。
ではどのような戦略なら高額物件を買うことができるのでしょうか?戦略は次の4ステップです
1. 50年変動金利ではなく35年固定金利のフラット35を前提にする
2. 共同ローンが前提だとしても、最悪、自分が引き取れる返済額の物件を探す
3. 物件が見つかったら、実際の契約はフラット50(50年固定金利)で実行する
4. この4番目の手順が重要ですがここでは秘密にしておきます。あとで解説します
ちょっとトリッキーなやり方ですが、このやり方だと驚くようなマジックが起きるのでお楽しみにしてください。
資産が増える魔法の戦略は
「35年ローン×新NISA」
4番目の種明かしを後でお話しするとして、実際、1~3で購入プランを考えてみましょう。
さきほどの例では、70平方メートルのマンションを約1億1000万円で購入して、頭金を除いて9000万円の住宅ローンを借りることが前提でした。
これをフラット35で借りるとしたら毎月の返済額は約29万3000円です。どうでしょうか?最初は夫婦共同ローンでも、最悪、最後は自分が引き取る形で返済できるでしょうか?
それが難しいと考える人は、もう少し安価な物件に変更すべきです。東京23区で70平方メートルの物件ではなくたとえば50平方メートルに条件を下げたらどうなるでしょうか?単純計算で住宅ローンは約6400万円になり、毎月の返済額はフラット35で約20万9000円になります。23区をあきらめて東京都下やお隣の千葉県で探しても、今なら中古でそれくらいの価格の物件はみつかります。
このようにして、自分で返済できる金額の物件を探すというのが手順の1と2です。そしてここでトリッキーなのですが手順3として、この6400万円をフラット35ではなくフラット50、つまり50年の固定金利で借りることにします。
今、フラット50の最頻金利は1.99%です。この条件で返済額を計算すると毎月の返済額は約16万9000円。差額で35年ローンよりも4万円も返済額が低くなります。
さて、ここで手品のように怪しい「手順4」の登場です。
手順4:この差額の4万円、住宅ローンに支払ったつもりで、新NISAで投資をします。
たとえば人気のオルカン(オールカントリー型投資信託)に毎月投資をしたとしましょう。毎月4万円を35年間続けるとしたら累計の投資額は1680万円で新NISAの上限以内に収まります。
さて、人気のオルカンは過去安定して年利6~8%で上昇していることが知られています。私が実際、長期の平均利回りを計算してみると年利7.55%でした。仮にこの利回りで35年間、毎月4万円ずつ投資をしていくと35年後には新NISAの残高はどうなっているでしょうか?
信託報酬率が無視できる範囲内だと想定すると、投資額1680万円は35年後には約8200万円に増えている計算です。もっと堅めに外貨MMFのように年利4%の金融商品に投資をしたとしても、35年後の資産は約3700万円に増えます。新NISAですから増えた分への所得税は払わなくても大丈夫。
そして35年後がやってきたとします。
住宅ローンの借入れ残高は当初の6400万円から返済が進んで約2600万円になっています。ここでオルカンを全部売却して住宅ローンを繰り上げ返済しましょう。するとどうなるでしょうか?
あなたの手元には現金5600万円の老後資金と購入したマンションが一部屋残ることになります。すごいでしょ?
まるで怪しい手品のような方法ですね。いったい何をやっているのか、経済的な種明かしを解説してみたいと思います。
実はここでの最大のポイントは、50年間を固定金利で貸し出すフラット50の金利がリスクを勘案した経済合理的な水準よりも低すぎる水準に設定されていることです。
本来であれば短期の定期預金を集めて貸し出しを行うメガバンクや地銀が50年の長期固定ローンを貸し出すこと自体が、経済学の世界でいうとリスクを無視したおかしな話なのです。
ところが住宅ローンは国民に向けた国策であることと、銀行から見ても貸出残高が銀行経営の中で許容できる大きさであることから、あえて国民に対して有利な「50年、固定金利1.99%」という条件で貸し出されているのです。
一方で世界の株式市場全体の成長スピードは長期的に金利を上回ります。インデックス投資ならあらゆるリスクを平均化して最もリスクは小さくなります。そして35年という長期の投資期間では、複利のマジックで投資金額は雪だるま式に膨れ上がります。これがオルカンという金融商品の前提です。
ですから経済学的な知識を前提に考えると、今回紹介したようなマジックが成立するのです。
最後にもう一度、魔法について説明して終わりましょう。やることは、「フラット35で借りても返済できる物件をみつけ、実際はフラット50で借り入れて、差額を35年間新NISAで運用する」です。このやり方は、変動金利でも成立しますが、毎月の支払額が計算できる点で私は固定金利での借入をお勧めします。
あくまで理論的にはそうなるのですが、隠れたリスクとして戦争で日本が破滅するとか、人類がAIに支配されて世の中のルールががらりと変わった場合は、35年後の人生計画が狂ってしまうかもしれません。実際にそれをやるかどうかはあくまで個人のリスクでお試しください。お気をつけて。